Tea Time -研究者Tのつぶやき-

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「携帯電話をアルミホイルで包むと電波が届かなくなる」のは本当に静電遮蔽のせい?

 本ブログを書くのも、かなり久しぶりです。最近はすっかりtwitterやFacebookにシフトしていましたので。。
 今回、ふとしたきっかけで、表題の疑問が生じたので、自分なりに考えを整理し、簡単な実験を行ってみたので、まとめてみました。おかしな点やわかりにくい点がありましたら、ご指摘頂けると嬉しいです。

「携帯電話をアルミホイルで包むと電波が届かなくなる」のは本当に静電遮蔽のせい?

1. はじめに
 導電性の物質(金属等)で覆われた中空の空間には、外部の「静電場」の影響が及ばない。これを「静電遮蔽」という。この実例として、「携帯電話をアルミホイルで包むと電波が届かなくなる」を紹介しているものをインターネット上で結構見かける機会があった。映画「真夏の方程式」で湯川博士が示した通り、アルミホイルで包まれた携帯電話に電波が届かなくなるのは確かだ。
 だが、携帯電話の電波は静電場ではなく変動電場なので、「静電遮蔽」の事例としてはこれは不適切なのだ。ここでは、「携帯電話をアルミホイルで包むと電波が届かなくなる」のは「静電遮蔽」ではなく、「表皮効果」によるものであることを示す。

2. 「静電遮蔽」とは?
 静電場において、導体(アルミなど、電流が良く流れる物質)内部の電場はゼロとなる。導体内部は電荷が自由に動けるので、外部から電場が与えられると、導体内部の電場がゼロとなるように導体内の+と-の電荷が移動する。つまり、導体内の電場を打ち消す電場が作り出されるのだ。その結果、導体内部は電場がゼロに保たれる。導体で中空の空間を作った場合には、その内部の空間の電場はゼロとなる。これが静電遮蔽である。
 この考えの前提となっているのは電場が時間変化しないということである。電場が時間変化する場合(変動電場)は、それと共に導体の電荷分布が時間変化するので、その影響を考慮する必要が出てくる。

3. 静電場と変動電場(電磁波)の違い-「表皮効果」-
 時間変化する電場(変動電場)は導体の電荷を動かす。電荷の動きは電流である。電流は磁場を誘導する。この誘導磁場は、電流の流れを妨げる働きをするため、導体に入り込んだ変動電場(電磁波)は導体内を進むにつれて減衰する。導体内に入射した電磁波が1/e(約0.37倍)に減衰する厚さを「表皮厚さ」と呼び、電波が導体の表面近傍にのみ入り込む効果を「表皮効果」と言う。(なお、「表皮効果」は交流電流が導線の中央はほとんど流れず、表面付近に流れる効果としても知られている)
 詳しい説明は省略するが、「表皮厚さ」は、導体の電気伝導度や、電波の周波数によって異なる。「表皮厚さ」は周波数の高い電波ほど小さくなり、周波数の低い電波ほど大きくなる。つまり、高い周波数の電波ほど、薄い導体で大きく減衰される(遮蔽される)。一方、低い周波数の究極が「静電場」であり、表皮厚さは無限大となる(減衰を受けない)。
アルミの電気伝導度を3.5×107[S/m](温度摂氏20度)とした場合、「表皮厚さ」の周波数依存性は以下の通りである。

表1 アルミの表皮厚さの周波数依存性

 周波数 100kHz 1MHz 10MHz 100MHz 1GHz
 表皮厚さ[μm] 270 85 27 8.5 2.7

 なお、表皮効果の場合、導体内で電波は減衰するが完全にゼロになるわけではない。表皮厚さも1/eに減衰する距離をスケールの目安として用いているだけなので、この距離で電波が完全に遮断されるのでは無い点に注意が必要である。

4. 「表皮効果」の実験-周波数による応答の違い-
 前述したように、「表皮効果」は周波数に依存する。アルミホイルの厚さは12μmなので、表1から考えると、アルミホイルの厚さと「表皮厚さ」が同じ程度となるのは、周波数が数十MHz程度のところである。そこで、FM放送(超短波放送:76MHz~90MHz)とAM放送(中波放送:526.5kHz~1602kHz)が、それぞれアルミホイルによって遮蔽されるかどうかを実験により試してみた。
・FM放送のアルミホイルによる遮蔽実験


・AM放送のアルミホイルによる遮蔽実験


 結果は次のようにまとめることができる。
・FM放送(超短波放送:76MHz~90MHz):音声は全く聞こえなくなり(ノイズのみ)遮蔽されている。
・AM放送(中波放送:526.5kHz~1602kHz):音量は小さくなるものの遮蔽されない。

 この結果は、「表皮効果」で考えると理解できる。AM放送は周波数が低いために、電波は減衰を受けるもののアルミホイルの厚さでは十分に遮蔽できない。FM放送はアルミホイルの厚さで十分な減衰を受け、ラジオが電波を受信できなくなった。もちろん、電波を受信する場所や選択した放送局によって、源となる電波の強度は異なるし、受信機(ラジオ)の感度も異なるので、条件が違う場合に同じ実験結果が得られるとは限らない。但し、重要なことは、「AM放送はアルミホイルで完全には遮蔽されなかった。」という事実である。これは、「静電遮蔽」からは全く説明することが出来ない。
 なお、携帯電話の周波数はFM放送よりも更に高い700MHz~2.5GHzなので、表皮厚さは更に薄くなる。よって、アルミホイルの厚みで十分遮蔽できることは「表皮効果」で説明可能である。

5. まとめ
 考察及び実験結果に基づく本論のまとめは以下の通り。
・AM放送などの周波数の低い電波は、アルミホイルでは完全には遮蔽されない。
・これは「静電遮蔽」ではなく、「表皮効果」による電波の減衰で説明できる。
・「静電遮蔽」の事例として「携帯電話をアルミホイルで包むと電波が届かなくなる」は適切ではない。

 金属(アルミホイル)によって覆われた空間に携帯電話の「電波」が届かなくなるのは、「静電遮蔽」ではなく、「表皮効果」による電波の減衰であると考えられる。本考察と整合する実験結果も得られていることから、“携帯電話をアルミホイルで包むと電波が届かなくなる”効果は、「静電遮蔽」ではなく、「表皮効果」による電波の減衰として説明するのが適切であろう。実際、物理の教科書やいくつかのWebページにおいては、同事例を「静電遮蔽」ではなく、「電波遮蔽(電磁シールド)」として区別して説明している。その一方で、同効果を「静電遮蔽」の事例や実験として説明しているコンテンツがネット上で散見されるため、本考察を提示した次第である。
 ラジオをアルミホイルで覆った時に、FM放送とAM放送で遮蔽される/されないという違いが見られるのは、放送波の周波数帯の違いや「表皮効果」の周波数依存性などを説明するのに適しているかもしれない。
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